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宮崎地方裁判所延岡支部 昭和63年(ヨ)37号 判決

債権者

堀田孝一

右訴訟代理人弁護士

鍬田萬喜雄

同右

中島多津雄

同右

松田幸子

債務者

学校法人延岡学園

右代表者理事

佐々木秀雄

右訴訟代理人弁護士

佐々木龍彦

同右

俵正市

主文

一  債権者が債務者に対し労働契約上の権利を有することを仮に定める。

二  債務者は、債権者に対し、昭和六三年七月一日以降本案判決確定に至るまで毎月二一日限り金二八万二九六〇円を仮に支払え。

三  訴訟費用は債務者の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  申請の趣旨

主文第一、第二項と同旨

二  申請の趣旨に対する答弁

本件申請を却下する。

第二当事者の主張

一  申請の理由

1  当事者

(一) 債務者は、肩書地において延岡学園高等学校(以下「学園」という)を設置経営している学校法人である。

(二) 債権者は、昭和四八年四月以降、学園に理科教諭として勤務していたものであり、また、学園の教職員をもって構成する延岡学園教職員組合(以下「組合」という)の組合員であって、組合の執行委員三期、書記長二期、執行委員長三期を勤め、現に執行委員長の地位にある活動家である。

2  懲戒解雇

債務者は、昭和六三年七月一日付けで、債権者に対し、懲戒解雇する旨の意思表示をした。懲戒解雇理由書によると、その理由は、債権者が組合の執行委員長の地位にあって次の四点の違法な組合活動を指導したものであり、(一)の点は勤務規定三〇条二号に、(二)及び(四)の各点は勤務規定三一条二項に、(三)の点は勤務規定三二条四号にそれぞれ違反し、勤務規定四九条二号及び五号に該当するというのである。

(一) 教室でのリボン闘争

昭和六三年四月八日午前八時二五分の始業時より、組合員全員にリボンを着用させて勤務させ、これに気付いた校長が、午前八時三八分に組合代表者として井上孝文書記長を校長室に呼び厳重に注意した。しかし、その後も着用を止めず、午前一〇時直前までリボンを着用したまま勤務するに至らしめた。

(二) 生徒への組合文書の配付

昭和六三年四月八日の始業式当日、登校して来た生徒達に対し、校門へ入ろうとする場所において、組合の一方的な見解に過ぎない文書を直接手渡した。

(三) 学園の名誉を毀損する文書の配付

昭和六三年四月七日、組合は、宮崎県総務課を訪れ、組合作成にかかる「行政指導申入れ書」なる文書を提出した。同文書に指摘した内容は、事実を極めて歪めるか、事実無根の事柄が多く、学園の名誉を著しく傷付けることであるばかりか、これをもって指導を願い出るなど言語道断という他はない。しかも、このような不当な文書を、数回にわたって生徒父兄あてに送付し、また、広く闘争支援を仰ぐために、多くのところにも配付公表した。

(四) 施設内における文書配付

施設内における組合文書の配付については、昭和五五年八月二三日地労委における和解協定書により、機関紙に限って一定のルールを遵守する条件のもとで許可した経緯がある。しかし、組合は、その後この約束を度々破り、学園からの警告にもかかわらず、再々文書を配付してきた。そして、昭和六三年五月三一日と翌六月一日にも、延岡学園理事会あてと称する文書を無断で職員の机上に配付した。しかも、その内容は、事実に反する組合の一方的な主張に過ぎないものである。

3  懲戒解雇の無効

債権者に対する懲戒解雇の意思表示は、次の理由により無効である。

(一) 懲戒事由不該当性

債務者が解雇理由としてあげる四点の組合活動は、以下に述べるように、いずれも懲戒事由に該当しない。

(1) 教室でのリボン闘争

組合員が着用したリボンは、長さ一〇センチ・幅二センチのもので、「明るい学園をつくろう」との文字が記載されていたに過ぎず、ことさらに生徒を刺激するものではなく、かつ、着用時間も始業式当日の僅か一時間半程度であり業務遂行になんらの支障はなかったから、本件リボン着用は、勤務規定三〇条二号に該当しないものである。

(2) 生徒への組合文書の配付

債務者は生徒への組合文書の配付が勤務規定三一条二項に違反するというが、同規定は、組合の文書活動のすべてを債務者側の専権により左右し得る性質・内容のもので、組合の言論・表現の自由は完全に否定されるといっても過言ではないから、憲法二一条の精神を逸脱し公序良俗に違反するものとして無効といわなければならない。仮に同規定が無効でないとしても、組合員は学校の施設外で生徒に文書を配付したのであるから、施設内配付を規制する同規定に該当するものではない。

(3) 学園の名誉を毀損する文書の配付

本件行政指導申入れ書は、学園教師の労働条件、常勤講師の雇用止め問題、理事長家族の利益優先及び学園の衛生環境などの教育条件等に関する一八項目の諸問題を記載したものであるが、これらの項目の多くは組合が従来その改善を要求して団交を求めていた事項であって、「秘密」に属するものは何もなく、また、公にされることにより子供の教育が改善されて債務者の利益になることはありこそすれ、「学校の不利益となるおそれのある事実」など一つもない。そして、申入れ書に指摘された事実は、その大部分が真実であり、また、真実と信ずるにつき相当の理由があるもので、事実無根との批判は根拠がない。申入れ書の指摘事実が、教育という公共的・公益に関するものであり、かつ、そのすべてが組合においてその改善を要求してきた債務者との間の争点であったことに照らすと、その改善を監督官庁たる宮崎県に申し入れ、さらに子供の教育環境に利害を有する父兄に送付したことは、組合の正当行為であって、勤務規定の懲戒事由に該当するということはできない。

(4) 施設内における文書配付

本件両文書の配付についても、債務者は、勤務規定三一条二項違反を主張するが、同規定が組合の言論・表現の自由を完全に否定するもので、憲法二一条の精神を逸脱し公序良俗に違反するものとして無効であることは、前記(2)で述べたとおりである。また、債務者は、常勤講師雇用止めの無効を訴える仮処分申請事件の証拠として、右谷浩が作成した陳述書の記載事実に衝撃を受けたものの如く、同人を威迫し、その熊本中央女子高校における身分をも左右しかねない卑劣な立証妨害行動に及んだものであり、組合は、緊急に債務者の右行動を中止させ、右谷の地位保全を講ずるために、急遽抗議文を作成して債務者に提出するとともに、実体を教職員に知らせるべくこれを配付したものである。従って、本件両文書配付は、正当防衛ないし緊急避難的性格を有するものである。さらに、組合の文書活動に対する規制を強硬に押し進める債務者側の姿勢からして、本件両文書配付の承認を求めたとしても承認しないことは明らかであり、自ら承認する意思もないのに承認のないことを問うのは背理というしかなく、前記勤務規定違反の主張は、信義則違反及び権利濫用として許されず、同規定の解釈適用を誤ったものである。

なお、組合と債務者間の昭和五五年和解協定書では、組合機関紙の職員に対する配付につき、その配付方法に一定のルール遵守を要件とするほかは、制限なく認める旨が約定されており、組合は、その後右ルールを遵守して組合機関紙を配付していた。また、組合機関紙以外の組合関係文書については、何らの制限がなく、自由に配付できることが、労使の慣行として確立しており、少なくとも、昭和六二年一一月下旬ころまでは債務者が問題とすることはなかった。従って、懲戒理由の中の組合による再々の約束違反という債務者の指摘も誤りである。

(二) 不当労働行為

本件懲戒解雇は、次のとおり、組合の正当な行為をしたことを理由になされたものであり、労働組合法七条一号の不当労働行為として無効である。

(1) 教室でのリボン闘争

組合は、従前から専任教員の増員を要求し、不安定雇用の常勤講師の専任化を求めて団交を要求してきたが、債務者はこれを拒否し、能丸、濱口両常勤講師の再雇用を認めなかった。組合がリボン闘争に及んだ目的は、右両常勤講師の雇用止めに抗議、反対することにあったのである。

右目的及び前記(一)(1)で述べたリボンの形状、記載文言、着用の時間、業務・生徒への無影響等の事情を総合すると、本件リボン闘争は、組合の正当な行為といえる。

(2) 生徒への組合文書の配付

生徒への文書配付の目的は、能丸、濱口両常勤講師の雇用止めの事実経過を生徒に知らせその心理的動揺を防止することにあった。組合員は教職員の始業時刻前の午前八時一五分に文書配付をやめており、明らかに勤務時間外の行動である。また、配付場所は、生徒通用門から少なくとも約一〇メートル離れた公道上(敷地外)である。さらに、文書の内容・表現は、前記目的に沿うよう充分配慮がなされており、債務者に対する名指しの直接的非難は皆無であるばかりか、生徒に対し支援を訴えたり行動の指示をすることも全くない。配付の対象となった生徒は、高校二、三年生であって、未熟とはいえ一定の理性と判断を備えており、また、両常勤講師の雇用止めは当時の生徒の関心事でもあり、実際に文書配付の影響で生徒が具体的行動に出たために教育が麻痺したという事実もない。以上の、文書配付の目的、時間・場所、内容・表現、生徒への影響という事情のほか、専任化要求に始まる一連の常勤講師問題について組合側との話合いを頑なに拒否していた債務者側の対応を考慮すると、当該文書配付は、正当な組合活動の範囲内のものというべきである。

(3) 学園の名誉を毀損する文書の配付

本件行政指導申入れは、学園の教育条件を整備し併せて労働条件の向上につなげていきたいという真摯な目的に出たものであり、決して学園の名誉・信用の失墜を狙ったものではない。組合の長年にわたる教育条件整備の要求は、いずれも労働条件と密接な関係にあり組合活動の範囲に含まれるというべきであるのに、債務者は団交事項外として黙殺し続けてきたのであり、また、常勤講師の専任化要求及び雇用止めの撤回は当然団交事項に含まれるのに、債務者はこれも団交事項外と強弁していたのである。組合は、このような債務者の不誠実な対応に絶望し、日教組私学部執行委員長の助言もあって、最後の有効な手段として行政指導の申入れに及んだものである。また、父兄への文書配付は、父兄に学園の教育状況について意見を表明する機会を与えその協力を仰ごうとしたもので、当然かつ正当なものである。なお、父兄あて文書の内容が行政指導申入れの内容と一部異なるのは、父兄に対する配付であることを配慮して若干控え目な表現をするとともに、より正確を期したためである。また、組合と連携関係にある宮崎県私教連の会議等の各団体に対して文書を配付したことも、組合間の情報交換として当然のことである。以上の申入れの目的・動機の正当性及び父兄等への文書配付の正当性に加えて、申入れ書に指摘された事実はその大部分が真実であり、また、真実と信ずるにつき相当の理由があったという文書内容の正当性を総合すると、本件申入れ及び父兄等への文書配付は、正当な組合活動の範囲内に属するというべきである。

(4) 施設内における文書配付

本件両文書の配付は、前記(一)(4)で述べたとおり、その目的において、右谷浩に対する債務者からの卑劣ともいえる攻撃に対し、その身分と生活を守る正当防衛ないし緊急避難的意味合いがあった。配付は、生徒の目に触れないように封筒に入れ、かつ、勤務時間外に行われている。また、両文書の内容は大筋において事実に符合しており、さらに、文書配付により学園の業務運営上の支障が生じたとの事実もない。以上の事情を考慮すると、本件両文書配付は、正当な組合活動であるといえる。

(三) 人事権の濫用

本件解雇は、次の事情に照らすと、人事権(処分権)の濫用として無効である。

(1) 本件解雇の目的は、組合の中心人物である債権者を学園から排除し組合の弱体化を狙うものであった。債務者は、常々右目的を達成する機会をうかがっていたのであるが、本件解雇の理由となっている組合活動をその絶好の機会と捉え、懲戒事由の存否につき充分な調査及び吟味を経ることなく、本件解雇を強行したのである。

なお、本件解雇の後、四名の組合員が解雇を恐れて組合を脱退したため、組合員数が激減して組合活動ができにくい状況となったことに照らしても、本件解雇が組合の弱体化を狙ったものであることは明らかである。

(2) 本件解雇は、夏休みを約三週間後に控えた期末試験の直前になされており、債権者は試験問題の作成を済ませたところだったのであり、その解雇により期末評価を受ける生徒は直接的に多大な影響を被ったものである。本件解雇は、時期的な点からしても、公教育を担う私立学校にあるまじき非常識な暴挙である。

(3) 仮に本件解雇の理由となった組合活動に何らかの違法な点があったとしても、それは著しく軽微なものにとどまり、到底懲戒解雇に値する程のものではない。

4  保全の必要性

債権者は、債務者から毎月二一日に平均二八万二九六〇円の賃金を受給していたもので、他に収入の道はなく、住宅ローンを抱えながら妻と二人の子供の生活を支えていくことは、困難である。また、学園内に残った組合員は不安に戦いており、債権者は職場に復帰し組合員の先頭に立って組合を指導していく必要がある。

債権者は、地位確認の本案訴訟を提起すべく準備中であるが、本案訴訟の確定を待っては経済的に図り知れない損失を受け、また、組合の団結にも支障が出ることは必至である。

よって、債権者は債務者に対し、労働契約上の地位の保全と昭和六三年七月一日以降本案判決確定に至るまでの賃金の仮払を求める。

二  申請の理由に対する認否及び債務者の主張

1  申請の理由1(一)及び(二)のうち、債権者が組合の執行委員三期、書記長二期、執行委員長三期を勤めたことは知らず、その余の事実は認める。

2  申請の理由2の事実は認める。

3(一)  申請の理由3(一)の事実は否認ないし争う。同(1)ないし(4)についての債務者の主張は次のとおりである。

(1) 教室でのリボン闘争

本件リボン闘争は、既に(2)の生徒への組合文書の配付と同時になされており、両行為は相乗効果を持つものである。リボンの記載文言は、配付された組合文書と相俟ってみれば、生徒に対し学園と組合の対立を明らかにし組合への支持を求める趣旨であることは明白であり、生徒の学園に対する不信感を招きその教育のあり方に不安と動揺を惹起するおそれの大きいものである。リボン闘争により、就業時間中の職員の職務専念義務違反が生じたのはもちろんのこと、特に教室でリボン着用のうえ生徒指導を行ったことにより、生徒に対する教育効果を阻害するおそれは甚だしかったというべきである。

(2) 生徒への組合文書の配付

まず、施設内での文書配付等につき承認を受けなければならないとする勤務規定三一条二項は、学園が未だ心身の発達段階にある生徒を教育する特殊な職場環境であることを配慮した相当な規定であり、また、施設外での文書活動までも規制するものではないから、憲法二一条違反及び公序良俗違反を云々される謂われはない。

生徒に配付された組合文書の主旨は、学園の現状では生徒を大事にする教育ができないので、これをよくするため組合が頑張るというものであるから、学園を批判し、組合への支持を求めていることは明らかである。また、右文書の中で、二年目から教諭という校長の約束があったとするのは、組合による虚偽の断定的主張であり、これにつき「真実をお知らせします」というのは、組合の虚偽の主張を一方的に生徒に周知させる結果となるものである。そして、右文書は、前記主旨からして、生徒の学園に対する不信感を招き、学園の教育のあり方について不安感と動揺を惹起する内容のものである。生徒に対する教育効果をあげるためには、学園と生徒との信頼関係が最も重要であるのに、未だ心身の発達段階にある生徒に対し、右のような文書を配付することは、組合活動としても違法といわなければならない。さらに、配付方法についてみても、生徒登校時に校門直前で、校門を通過し学校施設に入ろうとする生徒に対し、生徒を名宛人とする文書を配付し、その大多数をして学校施設内で目を通させたものであり、施設内での文書配付を承認事項とする勤務規定に違反すると評価されるべきであるし、また、組合と債務者間の昭和五四年六月一一日付「覚書」の中の「校内における生徒への組合文書配付は行わない」との約定にも違反するものである。

(3) 学園の名誉を毀損する文書の配付

本件行政指導申入れ書は一八項目からなるが、いずれも虚偽または歪曲した事実を指摘したうえで、その大部分につき県当局の行政指導を促すもので、これを読む者をして摘示事実が真実であるかのごとく錯誤させる効果を持つものであり、名誉毀損罪、業務妨害罪に該当する部分が多々存する。このような文書を県に提出する行為は、監督庁たる県の権限行使を誤らしめ、また、誤った行政指導という形で私学の自主性への介入をもたらすおそれのあるものである。組合は、さらに、申入れ書を掲記した文書を、二、三年生の父兄あてに配付するとともに、関係組合、一般市民その他各方面にも配付したものであるが、右文書には、実際に県に提出された申入れ書とは多数の文言の相違があり、債権者の無責任な行動様式がよく現れている。債務者は、本件申入れ書の提出の結果、県担当職員の聞き取り調査を受けたほか、説明書の提出や県に赴いての説明を余儀無くされたのであり、県に不審を抱かれたうえ無用の弁明の労を負わされたことは、大きな不利益であるといわなければならない。また、申入れを記載した文書の配付は、父兄に心配を引き起こしたほか、特に生徒募集活動上重大な支障のおそれを生じさせている。さらに、債権者は、学園校長から申入れ書の記載の誤りを指摘され訂正を指示されながら、全く反省せず、指示にも従わなかったのである。このように、債権者の行為は極めて悪質であり、債務者の業務を妨害すること甚だしいものがある。

(4) 施設内における文書配付

昭和五五年和解協定では、組合機関紙のみについて配付方法の一定の制限を条件に承認なしで配付できると定めたものであり、組合機関紙以外の組合関係文書については、当時の勤務規定により承認を要するのが当然のことであり、自由に配付できることが労使慣行として確立していたということはない。仮にそのような労使慣行が成立したとしても、昭和六二年四月七日からは現行の勤務規定が施行されたのであるから、遅くとも施行の九〇日後にはその労使慣行は廃止されたというべきであり、さらには、昭和六二年一一月二一日には、「秋の大学習会」なる文書の無許可配付が勤務規定違反になるとして、学園教頭が債権者に注意したのであるから、少なくともこの時点で、承認を経ない組合関係文書の配付は許さないとの債務者の意思は明確になっている。

本件両文書は、いずれも、全職員の机上に配付されたもので、組合員間の内部連絡文書でも、組合機関紙でもない。これを、全職員に配付したのは、組合の主張の広報のためであり、その内容は、虚偽の事実及び債務者の名誉を毀損する文言を記載して、債務者に抗議するものである。債務者は、違法な組合文書の配付を発見する度に警告をしてきたが、債権者は、何ら反省することなく、このような文書を承認を経ずに配付したものであり、違反の情は特に重いといわなければならない。

(二)  申請の理由3(二)の事実は否認ないし争う。前記(一)(1)ないし(4)で述べたとおり、債権者の各行為は正当な組合活動とは到底いえない。

(三)  申請の理由3(三)の事実は否認ないし争う。

債権者は、組合の執行委員長の地位にあって、違法な組合活動を指導し、自らも違法行為を実行したものであり、それにより学園に甚だしい不利益をもたらし、学園の運営に支障を来すおそれを生ぜしめたものであって、その服務規律違反の責任は極めて重大である。債務者は、債権者が学園に勤務する限り、学園全体の秩序を維持することができず、生徒の教育を託された父兄に対する責任や組合員以外の職員に対する責任を果たすことができないと考え、債権者を学園職員から排除する必要があると判断したのである。

4  申請の理由4の事実は争う。

第三疎明関係(略)

理由

一  争いのない事実、勤務規定等

1  申請の理由1(当事者)及び同2(懲戒解雇)の各事実は、債権者の組合における役職歴関係を除いて、当事者間に争いがない。債権者本人尋問の結果(以下「債権者供述」という)によれば、債権者が、学園に就職して以来本件解雇に至るまでの大部分の期間において、執行委員、書記長または執行委員長という組合の役職にあったことが認められる。

2  (証拠略)によれば、現行の債務者就業規則として昭和六二年四月七日施行の延岡学園高等学校勤務規定(以下「勤務規定」という)が存すること、その第四章「服務規律」には、遵守事項(三〇条)、承認事項(三一条)及び禁止事項(三二条)が掲げられており、三〇条二号には「常に学園の名誉を重んじ、服装、言動その他職員としての品位を保つこと」を職員が守るべき旨、三一条二項には「職員が学校の施設内において、講習、集会、演説、放送をし、又は文書、図書を配付、あるいは掲示しようとするときは理事長及び校長の承認を経なければならない」と、三二条四号には「職務上知り得た秘密を漏らし、又は学校の不利益となるおそれのある事実を他に告げること」を職員がしてはならない旨それぞれ定められていること、また、その第一〇章「懲戒」には、四九条に「職員が次の各号の一に該当する場合においては、これに対して懲戒処分として譴責、減給、出勤停止又は懲戒解雇の処分をすることができる」と定められ、その二号に「上司の職務上の指示に従わず、学園の秩序を乱した場合」が、その五号に「職員としての品位を失い、学園の名誉を損する非行のあった場合」が掲げられていることがそれぞれ認められる。

ところで、債権者は、解雇理由とされた各組合活動が、勤務規定の右各条項に抵触せず懲戒事由に該当しないこと及び正当な組合活動として許される範囲内にあることをそれぞれ主張する。懲戒事由該当性の有無と組合活動としての正当性の有無とは、判断の基礎となる事情において重複する面が多く密接に関連するほか、仮に懲戒事由に該当する場合でも、組合活動として正当と認められるときには、当該行為を懲戒の対象とはなし得ないと解すべきものである。そこで、以下では、各組合活動ごとに懲戒事由該当性及び組合活動としての正当性の両者について併せて考察していくこととする。

二  リボン闘争及び生徒に対する文書配付について

1  解雇理由とされるリボン闘争及び生徒への文書配付は、いずれも昭和六三年四月八日に行われたとされているので、まず、同日までの債務者と組合の間の対立状況の推移を概観してみるに、(証拠略)を総合すると、以下の各事実が認められる。

(一)  学園では、昭和六〇年度から常勤講師制度が導入され、それまでの専任教員及び非常勤講師の他に常勤講師を採用するようになった。学園の常勤講師は、非常勤講師と同様に勤務規定上雇用期間が一年以内と定められ、専任教員が終身雇用的な身分保障を受けるのとは異なっていたが、他方、授業持ち時間数は専任教員よりも多く、また、学級担任や校務分掌については専任教員と同様に担当することがあり、そういう点で専任的な性格を持っていた。

(二)  濱口誠及び能丸淳一の両名は、昭和六一年四月から学園の常勤講師として採用され、昭和六二年度も引き続き常勤講師として勤務していたが、昭和六三年三月二四日付けで債務者から雇用期間満了の通知を受け、さらに、同月三〇日に昭和六三年度の雇用継続はしない旨の通告を受けた。

(三)  右雇用止めに先立つ昭和六三年三月七日、能丸及び濱口の両名は、同期の常勤講師であった右谷浩及び緒方浩とともに、組合に加入した。右四名の組合加入は、当時能丸の雇用止めが懸念されたため、それを阻止することが主な動機であった。

(四)  組合は、同月一〇日及び一一日の二回にわたり組合員となった四名の常勤講師の専任教員化を要求して債務者に団体交渉を申し入れたところ、同月二四日になって団体交渉が持たれたが、債務者は組合の要求を拒絶し、交渉は短時間で打切りとなった。さらに、同月二八日、再度団体交渉が持たれ、組合は組合員となった常勤講師らの雇用継続の確約を求めたが、債務者はそれに応ぜず、物別れに終わった。

(五)  濱口及び能丸の雇用止めが明らかになった同月三〇日、組合は、両名の雇用継続を求める団体交渉の申入れをし、翌三一日に債務者との間で団体交渉が持たれたが、債務者が裁判で争う旨を告げたため、実質的な話合いにはならなかった。さらに、同年四月四日、組合は、両名の職場復帰の件について同月六日に団体交渉を持つことを申入れたが、債務者は期日の返事をしないまま日数が経過したため、同月一九日再度の申入れがなされ、同月二一日に至ってようやく団体交渉が持たれた。債務者は、その席でも、裁判で争う旨の態度を示したため、結局話合いにはならなかった。その間の同月五日、濱口及び能丸は、地位保全の仮処分申請を当庁に提起した。そして、同月八日の始業式当日、組合による生徒への文書配付及びリボン闘争が行われたのであった。

2  そこで、生徒への文書配付及びリボン闘争についてみるに、(証拠略)を総合すると、以下の各事実が認められる。

(一)  昭和六三年四月八日は、学園では二、三年生の始業式が行われた日であった。同日の午前八時前ころから八時半までの三〇分余りの間、生徒通用門前の道路(門とは車道を隔てた向かい側の自転車道上)において、登校する生徒に対し、「生徒のみなさん・能丸先生、濱口先生両先生のことで真実をお知らせします」と題する組合名義のビラ合計七、八百枚が配付された。配付に当たったのは、濱口及び能丸のほか組合員約二〇名並びに宮崎県私立学校教職員連合の武本書記長及び日教組私学部の碓田執行委員長であった。なお、組合員は、始業時刻前の午前八時一五分ころ文書配付をやめて校内に入った。

(二)  右ビラには、濱口及び能丸が四月からの採用を拒否されたこと、両名とも二年前に採用されたとき校長から「本校は一年間は常勤講師として、二年目から教諭」との約束を受けていたこと、両名はこれまで熱心に指導に当たり生徒との信頼関係が作り上げられていたこと、組合は両名を学園に戻すよう頑張ることなどが記載されていた。

(三)  当日は、午前八時二五分から職員朝礼があり、続いて各教室でのホームルームの後、全校大掃除が行われ、午前一〇時から始業式が行われた。組合員は、職員朝礼のときから始業式の始まる直前までの約一時間半、リボンを着用した。その間、着用開始直後の午前八時三五分過ぎに、太田校長(理事)が井上組合副委員長に対し、リボンの取り外しを命じた。なお、組合員は、既に通用門前での生徒へのビラ配付のときからリボンを着用していたのであった。

(四)  リボンは、幅約二センチメートル、長さ約一〇センチメートルで、黄色地に「明るい学園をつくろう」という文言が記載され、組合員はこれを着衣の胸付近またはズボンの上付近に付けていた。

(五)  右ビラの配付及びリボン着用については、前日の組合職場会で討議されて、各記載内容・文言が確定されたのであり、ビラの配付は組合員全員の賛成で、リボン着用は二名を除く賛成多数でそれぞれ決定されたものであった。

(六)  組合と債務者との間には、昭和五五年八月二三日に宮崎県地方労働委員会立会いのもとに成立した和解協定書が存し、その中には「組合は、学園内においてプレートの着用はしないものとする」との項目が含まれている。

3  右1及び2の各事実を踏まえて、生徒への文書配付及びリボン闘争が懲戒事由に該当するか否か、また、それらが正当な組合活動といえるか否かを検討する。

(一)  まず、生徒への文書配付につき、債務者は、職員が学園施設内で文書を配付するときは理事長等の承認を要する旨を定めた勤務規定三一条二項に違反すると主張する。しかし、同規定は「施設内」での文書配付を規制するものであり、本件の配付場所は、前記認定のとおり、学園に隣接するとはいえ「施設外」の道路上であったことが明らかであるから、同規定違反に問うことはできない。また、同様の理由から、債務者主張の昭和五四年「覚書」の約定違反にも当たらない。しかしながら、同時に、債務者は、勤務規定四九条二号及び同五号に該当するとの主張もしており、右該当性の有無を考察する必要がある。

本件文書は、債務者が濱口及び能丸の両常勤講師を教諭登用の約束に違反して雇用を打ち切ったことを伝えるとともに、組合が両名の職場復帰に向けて行動することを宣言する内容であると認められるところ、「真実をお知らせします」との標題と相俟って、右約束は「真実」であり債務者がそれを不当に破ったとの印象を与え、結果として反対運動を行う組合への支持を求める趣旨になっていることは、否み難い。このような文書を登校途中に教師から手渡されれば、生徒が学園への不信、不安の気持ちを抱き、その心情に動揺を来すことは、容易に推測できるところである。組合としては、学園という教育施設の特性に鑑みて、成長途次にある生徒に対し無用の刺激を与えその教育効果を阻害する可能性のある行為に出ることは厳に慎まなければならないのであって、この点からすると、本件文書配付は、勤務規定の前記各条項の趣旨に反するものであり、かつ、組合活動としても行き過ぎとの誹りを免れない。

もっとも、組合が本件文書の配付に及んだ経緯として、常勤講師の雇用止めに関する団体交渉につき債務者の対応が話合いの拒否と受け取られても仕方のない硬直的なものであったという事情が存すること、本件文書の記載内容は結論的には前記問題点が存するとはいうものの、煽動的・挑発的な文言や悪意・中傷に満ちた罵詈雑言といったものは見当たらず、全体としては非常に抑制の利いたものとなっていることに照らすと、本件文書配付の違法性はその程度が低いというべきである。また、「二年目から教諭」という約束についても、(証拠略)を総合すると、濱口及び能丸の両名は同約束があったものと受け止めており、他方、校長が両名の採用面接時に公立高校の試用期間に言及したり二年目からの専任教員への登用の可能性を述べて励ました事実は少なくともあったと認められるから、約束が「真実」であると配付当時において主張することも全く根拠を欠くとはいい難く、この点も、本件文書配付の違法性がさほど強くないことの一つの理由とすることができる。

(二)  次に、リボン闘争について検討すると、右行為は、前記生徒への文書配付と一連のものとして行われ、常勤講師の雇用止め反対闘争について、組合員の団結を誇示・鼓舞するとともに、組合員以外の教職員及び生徒に対し理解及び支援を求める目的・効果を持ったものと認められる。それが勤務時間中に行われたことにより、組合員自身の職務に専念すべき義務に違反しかつ他の教職員の職務への集中を妨げるおそれがあったといえるのであり、学園の秩序規律の維持を阻害した可能性は否定しきれない。また、ホームルーム及び大掃除の際に生徒の眼にもリボンをさらしたことにより、生徒に学園への不信・不安を与え、その心情に動揺をもたらしたと推認し得るから、学園の教育業務を阻害した可能性も否定できず、この点は秩序規律の維持阻害の点よりも問題があるといえる。そして、昭和五五年の和解協定書で学園内でのプレートの着用を禁じる合意がなされたことにも、違反するものである。(プレートとリボンとで特に異なることはない。)以上からすると、本件リボン闘争は、勤務規定三〇条二号に違反するものであり、かつ、組合活動としても違法であるといわざるを得ない。

しかしながら、本件リボンの形状及び記載文言は無用な煽情的・刺激的効果を与えないようにかなり配慮されたものであると認められること、その着用時間は一時間半程度の短時間に過ぎず、しかも、その間に行われたのは職員朝礼、ホームルーム、大掃除であって、始業式開始前には外されていたのであるから、通常の授業のある日に相当時間リボン着用がなされた場合と比べると、職場の秩序規律及び生徒の心情に対する影響の度合いはかなり低かったといえること、さらに、生徒への文書配付について述べたのと同様に、それ以前の経緯として債務者側の団体交渉への硬直的対応という事情が存したことを総合考慮すると、本件リボン闘争の違法性の程度はかなり低いものであったというべきである。

三  学園の名誉を毀損する文書の配付について

1  まず、本件行政指導申入れの前後における組合の動向及び右申入れの影響等についてみるに、(証拠略)を総合すると、以下の各事実が認められる。

(一)  組合は、従前から教育条件及び労働条件の諸問題につき度々債務者に団交等を通じてその要求を提出していたが、要求を事々に無視され教育環境の改善が全くなされないままでいるとの不満を抱き、焦燥感を強めていた。

(二)  昭和六三年三月九日、日教組私学部執行委員長の碓田登が組合職場会に来援し組合員との意見交換を行った。その際、碓田は組合員に対し、教育条件等の問題について行政当局に対し指導を申し入れるのが有効であるとの助言をした。その後、組合員間で要求を出し合って検討し、同年四月三日、要求項目を取りまとめて宮崎県に対し行政指導申入れをすることを決定した。また、行政指導申入れとは別に債務者に対し団交要求をすることも決めて、その項目も取りまとめ、同月六日に教育条件の要求一五項目及び労働条件・設備その他の要求一二項目からなる要求書が、債務者に対し提出された。

(三)  そして、同月七日には、債権者らは、碓田登及び宮崎県私立学校教職員組合連合会の代表者と一緒に、宮崎県総務課に赴いて本件行政指導申入れ書を提出した。なお、申入れ書の記載内容は、別紙「行政指導申入れ項目」記載のとおりであるが、右内容は、債権者が同月五、六日ころ原稿を起案したうえで執行委員及び組合員の了解を取り付けて、その文言を確定したものである。また、申入れ書の名義人は、組合と宮崎県私立学校教職員組合連合会の連名とされた。

(四)  同月一二日ころ、宮崎県の担当職員が学園を来訪して、学園で起こっている問題についての聞き取り調査を行った。その後、県から債務者所有の不動産の問題のほか種々の項目についての問い合わせがあり、債務者は、数回県当局に赴いて説明を行ったほか、説明文の提出もした。以後は、県の方から債務者に対し、一定の項目につき改善指導を行ったとか、何らかの不利益な取扱いをしたとかいうことは無かった。

(五)  同月一八日ころ、組合は、「御父兄の皆様へ」と題する文書を、学園の二、三年生の生徒父兄あてに郵送した。右文書は、組合が県に対し行政指導申入れを行ったこと及び県当局からよく検討して指導するとの返事を得たことを頭書として付したうえで、申入れ書の記載内容を掲記するという体裁のものであった。右文書の記載内容は、大略行政指導申入れ書のそれを転記したものであったが、子細にみると、多くの点で行政指導申入れ書の文言の変更、加除等の修正が施されていた。右修正は、県への申入れの後組合員の間で摘示事実についてさらに検討して訂正をしたことや、父兄あての文書ということを配慮して表現を改めたことの結果としてなされたのであった。

さらに、右文書は、組合から直接に、または、宮崎県私教連や日教組私学部を通じて、宮崎県内及び九州内の教職員組合を中心とした労働組合や教育関係団体にも配付された。

(六)  組合は、同月二五日ころ、「学校側の文書の特徴と私たちの考え」と題する組合名の文書を、生徒の父兄あてに送付した。同文書は、債務者の同月一三日付父兄あて通知書に記された濱口誠及び能丸淳一両常勤講師の雇用止め問題についての見解を批判する内容のものであったが、その中にも、行政指導申入れ書の記載内容と同旨の事実摘示がいくつも記載されていた。

(七)  同年五月一九日、学園の父母の会の新旧会長が、行政指導申入れ書に記載された内容が事実かどうかを確認するために、学園を訪問して学内を見て回った。

(八)  その後、債務者が中学校を訪問して行っている入学説明会の席上や中学校の父兄が学園を訪問した機会に、学園の水道の衛生問題等が話題となった。もっとも、学園では翌平成元年度に定員増が行われ、過去最多の新入生が入学した。

2  ところで、本件行政指導申入れ書の記載内容が別紙「行政指導申入れ項目」記載のとおりであったことは、右1(三)に認定したとおりであるが、行政指導申入れ等の懲戒事由該当性及び組合活動としての正当性の各有無については、右申入れ書の記載内容の真実性または正当性の有無、すなわち、摘示された事実が客観的真実と符合しているか、あるいは、それを真実であると捉えたことにつき相当の資料が存するか、また、事実の評価を述べた部分につきその評価に不適切な点がないか等が、中心的な論点となると考えられるので、以下申入れ項目の順を追って右論点につき検討していくこととする。

〈1〉  常勤講師制度の弊害について

当該記載は、学園における常勤講師制度の弊害を述べてその廃止を訴える趣旨の内容であると理解できるところ、前記二1に述べたとおり、学園の常勤講師は勤務規定上雇用期間が一年以内と定められ、専任教員が終身雇用的な身分保障を受けるのとは異なっていたが、授業持ち時間数や学級担任・校務分掌の担当等の点では専任的な性格を持っていたこと、濱口誠及び能丸淳一常勤講師の雇用止めをめぐり組合と債務者とが厳しく対立していたことがそれぞれ認められ、また、(証拠略)によれば、学園の学校要覧・父母の会会員名簿、卒業生名簿等には、常勤講師が専任教員と同様に「教諭」として掲載されていることが認められる。右各事実に照らすと、当該記載は事実に基づく組合の認識・評価を記したものということができ、そのような認識・評価をすること自体の当否については組合と債務者とで見解が分かれるところであるが、当該記載の内容が不当であるということはできない。

〈2〉  理事会開催について

当該記載は、理事会が開催されないまま常勤講師の「解雇」がなされたことを指摘し、理事会運営についての指導を申し入れる趣旨の内容であると理解できるところ、(証拠略)によれば、昭和六三年一月と二月に各一回ずつ債務者の理事会が開催されたが、常勤講師の雇用止めの問題が報告されまたは議論されたことは無かったこと、組合員数名が理事の一人を訪問して常勤講師の雇用止めの件で理事会が開催されていないことを確認したことがそれぞれ認められる。「今年になって一度も理事会が開かれない」との記載は理事会が他の議題についても全く開催されなかったような誤解を与える可能性があり、用語法として慎重さを欠くというべきではあるが、文章の前後関係から常勤講師の雇用止めの件で理事会が開催されていないことを問題としていることは容易に読み取り得るところであり、そして、そのこと自体は事実であるから、後は理事会開催の必要性の有無につき見解が分かれるだけであって、当該記載の内容が不当であるとはいえない。

〈3〉  監事について

当該記載は、監事の一人がもう一人の監事の名前を知らないことを指摘し、そのような中で常勤講師の「解雇」がなされたことを述べて「ずさんな運営」についての指導を申し入れる趣旨の内容であると理解できるところ、(証拠略)によれば、昭和六三年三月末ころ債権者らが常勤講師の雇用止めの件で監事の一人である渡部憲市を訪問した際に、同人が「もう一人の監事の名前は知らない」と答えたことが認められる。右答弁の真偽・真意についてはさらに吟味する必要があったとしても、当該記載は一応の根拠に基づくものというべきであり、その内容が不当であるとはいえない。

〈4〉  教員免許について

当該記載は、債務者が「正式教員免許」を所持しない者を多数採用して教壇に立たせ、かつ、要職に付けていることを非難し、その改善指導方を申し入れる趣旨の内容であると理解できるところ、(証拠略)によれば、学園には教育職員免許法四条にいう「普通免許状」を持たず同条の「臨時免許状」を有する教員が一〇名ほどいること、その内の五名ほどが学級担任を、二名ほどがクラブ顧問をしており、さらに三名が部長・副部長という管理職(総員数は九名)に就いていること、債務者は「臨時免許状」も適法「正式免許状」であって問題はないという立場をとっていることがそれぞれ認められる。組合としては、「正式教員免許」ではなく「普通免許状」という言葉を用いたうえで、それ以外の免許が果たして「正式」な免許といえるか否かを問うのが正確な用語法であったと考えられ、この点で債務者がおよそ資格のない違法な教員を採用しているかのような誤解を与えかねない記載となっているのは、配慮に欠けるとの批判が一応妥当する。ただ、「学校側は臨時免許でさしつかえないといい」との文言と対比すると、当該記載が、「臨時免許状」を保持する者を多数採用することの当否を問題としていることは容易に看取することができるし、また、右認定の各事実に照らすと、当該記載の指摘はほぼ事実に基づいているということができるのであって、そうすると、右批判すべき点はあっても、当該記載が不当であるということはできない。

〈5〉  学校法人の土地の譲渡について

(証拠略)を総合すると、問題となっている土地は、延岡市桜小路三六五番一の宅地であり、債務者理事長佐々木秀雄個人の所有地であること、同土地を右佐々木秀雄の二男である佐々木龍彦が賃借し、昭和五二年に二階建事務所・車庫を建築して以後法律事務所として使用していること、債権者らは、同土地上に以前学園の施設が建っていたのが壊されて右法律事務所が建てられたために、学校法人の土地が理事長の家族に譲渡されているのではないかとの疑念を抱いたこと、そして、債権者は、申入れ書作成の数日前に同土地及び地上建物の各登記簿謄本を取り寄せたものの、所有権関係の確認をきちんとしないまま、右疑念を文章化して起案したこと、その後昭和六三年五月に債務者側から間違いを指摘され、組合においてもそれを確認しながら、訂正あるいは陳謝することなく、「疑念を表明しただけで、譲渡を断定してはいない。学校法人の経理の公開要求を拒否している債務者の態度にこそ問題がある」との見解を述べたに止まることがそれぞれ認められる。

右各事実を踏まえて記載内容の真実性・正当性を考察するに、当該記載は、債務者理事長が法人財産を私物化していることを示唆するもので、理事長個人の名誉を毀損することはもちろん学校法人の経理に対する不信を抱かせる内容のものであるから、そのような疑念を抱いたとしても、これを監督官庁等に表明しようとするときには、それが相当な資料によって裏付けられるかを慎重に検討すべきであり、その作業を疎かにしたまま安易に疑念を表明することは、事柄の重大性に鑑み、厳に戒むべきことである。この点からすると、折角登記簿謄本を取り寄せながらそれを精査せずに疑念を文章化したことは、いかにも軽率の誹りを免れず、理事長の名誉毀損及び債務者の信用損害となる不実の記載をしたことについて、組合及び債権者は、厳しい非難を免れない。さらに、間違いが判明したときには、それを率直に訂正・陳謝するのが肝要と思われるところ、前記の「断定してはいない」との組合見解は遁辞に過ぎず、また、経理公開の要求の点が背景事情に存するとしても、それは当該記載の不実性を緩和するものとはいえず、結局反省の情なしとの非難もこれまた免れ難い。

ただ、疑念を抱いたこと自体は全く根拠のないことではないこと、また、疑念の裏付け作業を全然しなかった訳ではなく、一応登記簿謄本の取り寄せは行ったこと、虚偽と知りながら意図的にそれを記載したという悪質な案件とは事案を異にすること等は、当該記載の不当性の程度を判断するにつき、ある程度債権者に有利に斟酌すべき事情であるといえよう。

〈6〉  副理事長による公用車使用について

(証拠略)によれば、副理事長が毎日数時間昼食に公用車で帰ることは事実であると認められ、それが「私的なことに公費がつかわれている」といえるかは評価の問題であって、当該記載に特に違法視すべき内容は存しない。

〈7〉  保健室のベッド及び日本庭園の樹木について

(証拠略)を総合すると、学園の保健室には相当古い木製のベットが二台あり、他校から譲り受けて長年買い換えずに使用し続けていること、最近診察台が二台購入され保健室に置かれたこと、組合が以前ベットの買換えを債務者に対して要求したことは無かったし、養護教諭等から伺いなり購入願いなりの手続きを経た買換えの申出もなされてはいないこと、他方、理事長室に近接した日本庭園には、数本の樹木が植えられており、その価格は高くても一本二万円程度のものであり、数十万円はおろか十数万円するものも一本もないこと、組合が数十万円という価格を記載したのは、組合員の一人が債務者事務長の佐々木雅彦から聞いたという話に一応基づいていることがそれぞれ認められる。

右各事実を踏まえて記載内容の真実性・正当性を考察するに、当該記載は、県の債務者に対する補助費が、生徒の衛生等のために必要な施設には使われず、かえって日本庭園に高価な樹木を植えるといった無駄遣いがなされていることを訴え、その改善指導方を求める趣旨の内容であると理解できるところ、まず、必要な支出を怠っていることの例としてあげられる保健室のベッドの件については、古いベッドではあるが現在も使用されていることに照らすと買換えが必要とまでいい切れるものではないし、さらに、「いくら要求しても」債務者が買換えを拒絶したという事情の存在は窺われないから、組合がその件を持ち出すのは当を得たこととはいえず、記載内容には不当な誇張があるといわざるを得ない。もう一方の日本庭園の樹木の件については、「一本数十万円の木がぼんぼん植えられている」というのは明らかに不当な誇張であり、これまた、無駄遣いの例としてあげるのは不適切というほかない。総じて、当該記載は、不当に誇張された二例を対比しながら債務者による補助金の不正使用を印象付けるものであり、債務者の名誉及び信用を毀損する違法な内容であるということができる。

ただ、保健室のベッドが長年買い換えられずに使用され続けてきたこと及び日本庭園の樹木の一部にやや高価なものがあることは事実であること、また、右樹木の価格については、不確かな伝聞に基づいて記載したことは軽率の誹りを免れないが、一応それに基づいて記載がなされており、全くの捏造であるという訳ではないこと、さらに、組合の真意は教育施設の改善に支出を惜しむべきでないことを訴えたものであると忖度できることの各事情を総合すると、不当な誇張があるとはいえ、違法の程度はさほど強いものではないといえる。

〈8〉  大量の退学者について

当該記載は、大量の退学者及び休学者が出ていることを指摘してその指導を申し入れる趣旨の内容であると理解できるところ、(証拠略)によれば、右の指摘自体は相当な根拠に基づくものであると認められる。それが債務者の責めに帰する理由によるものかどうかは見解の分かれるところではあろうが、組合が県当局による指導を要する問題点であると捉えたことを不当ということはできない。

〈9〉  常勤講師の「解雇」等について

当該記載は、常勤講師が簡単に解雇されたこと等を指摘しこれを放置することの不当性を訴える趣旨の内容であると理解できるところ、前記〈1〉について述べたとおり、学園の常勤講師の雇用期間が短期でありその雇用止めを巡って労使の対立があったこと、学園の学校要覧等に常勤講師が「教諭」として掲載されていることの各事実が認められることに照らすと、当該記載は事実に基づく組合の見解を述べたものといえるのであって、その内容が不当であるということはできない。

〈10〉  給与格差について

当該記載は、学園の教師の賃金が公立高校や他の私立高校と比較してかなり低く、さらに、組合員は非組合員と比べると不利益な賃金差別を受けていることを述べて、その改善指導方を申し入れる趣旨の内容であると理解できるところ、(証拠略)を総合すると、当該記載は、いずれも資料に基づくものであると認められ、また、各資料につき全く信用できないとしてこれを排斥すべき事情も窺われないから、その内容が不当であるということはできない。

〈11〉  組合の基本的活動の禁止について

当該記載は、債務者が組合の基本的活動を禁止していること等を訴えて指導方を求める趣旨の内容であると理解できるところ、後記四で述べるとおり、学園内での文書配付についてはすべて承認を要するとの勤務規定が施行され、債務者は組合関係文書についても右規定の適用がある旨を宣明していることが認められる。また、(証拠略)によれば、組合員による職場会の会場として学園施設を使用したいとの組合の申入れに対し、債務者が拒否的態度を示していること、勤務時間中における組合費の徴収についても債務者がこれを禁止していることがそれぞれ認められる。右各事実に照らすと、組合において基本的活動が禁止されているとの認識・評価を持つこと自体はそれなりの根拠に基づいているといえるのであり、その当否についての債務者側の反論はあり得ても、当該記載の内容が不当なものであるということはできない。

〈12〉  スリッパの買替え、ジュース自動販売機設置による理事長の家族の利益優先について

(証拠略)を総合すると、学園内の売店及びジュース自動販売機は、理事長の三男である佐々木祐輔が経営していること、学園では、昭和六二年の新学期から全生徒に新年度毎にスリッパの買替えを義務づけるようになり、それを学園内の売店で購入すべきこととしたこと、従前は紛失したり古くなったりしたときにのみスリッパを購入すればよかったが、スリッパ盗難が数多く発生しており、盗難解消策として生徒指導部が毎年の買替えを発案し採用になったものであること、その後スリッパ盗難は殆ど無くなったが、集中管理室が設置されそこにスリッパが置かれるようになったことが盗難防止に寄与していると考えられること、学園内にはジュースの自動販売機が数台設置されているが、組合は昭和六一年度の債務者に対する要求の中で自動販売機の撤去を求めており、また、職員会議でも紙コップの散乱や床の汚損が問題として討議されたことがあることがそれぞれ認められる。

右各事実を踏まえて記載内容の真実性・正当性を考察するに、当該記載は、不必要なスリッパの買替えや教育上好ましくないジュース自動販売機の設置を債務者が敢行していることを指摘し、それが理事長の家族の利益優先の考えに根ざしていることを示唆する内容のものであると理解できるところ、昭和六二年度からスリッパの売店での買替えが義務づけられたこと、ジュース自動販売機が設置されその撤去を組合が要求していること、売店及びジュース自動販売機は理事長の家族の経営になるものであることは、いずれも事実として認められるところであり、スリッパ買替えの義務づけが「不必要」なことか、また、ジュース自動販売機の設置が教育上好ましくないことかは、いずれも見解の分かれるところではあろうが、組合の見解も一個の見方として全く不当であるとはいいきれない。さらに、理事長の家族の利益優先の示唆についても、そのような見方があり得ない訳ではなく、これまた不当であると断じることはできない。

〈13〉  特別奨学生の問題について

(証拠略)を総合すると、バレーボール部の特別奨学生として昭和六一年に入学した女子生徒が、二年生になって退部を申し入れた後に、学園からそれまで免除されていた入学金、授業料及び寮費の合計約八〇万円の支払を請求され、出校停止処分となり、昭和六二年九月以降登校しなくなったこと、そして、右支払をしないまま昭和六三年二月に前年一一月三〇日付けで退学扱いとなったこと、組合としては、同生徒が授業料等の支払をしないまま学校をやめたため除籍になったと考えていたこと、昭和六三年初めころ野球部の特別奨学生であった二年生の男子生徒が自殺したこと、当時同生徒は腰を痛めて練習が出来ず悩んでいたこと、なお、学園には部活動奨学生(クラブ特待生)の制度があり、奨学生は、入学金、授業料及び寮費等の支払を全額または一部免除されるという特典を与えられるが、長期疾病や休学等により奨学生としての適格性に欠けるに至ったときには、既に免除された金額を弁償させられることがある旨規定されていることがそれぞれ認められる。

右各事実を踏まえて記載内容の真実性・正当性を考察するに、当該記載は、クラブ特待生の制度に存する「理不尽」を訴え、その改善指導方を求める趣旨の内容であると理解できるところ、「理不尽」の具体例としてあげられている女子生徒の退学の件は概ね事実と符合しており、それを「理不尽」とまでいい得るかは評価の問題として残るところではあるが、記載内容が不当であるとはいえない。しかしながら、もう一つの具体例である男子生徒の自殺の件は、前の女子生徒に対する授業料等支払請求・出校停止処分・除籍と関連付けて「理不尽」と決めつけており、自殺の真因が奈辺にあるかを究明しないまま、クラブ特待生の制度を批判するために安易に摘示したとの批判は免れない。もっとも、「それを苦にしてかどうかは分からないが」という留保は付けられてはいるが、分からないのであれば記載しなければよいのであり、結局は「理不尽」と決めつけることにより、留保そのものが無意味となっていることに照らすと、無責任な執筆態度は覆うべくもない。自殺という衝撃的な事柄であるだけに、同記載は、学園の特別奨学生制度に対する誤解と不信を招く不当なものというべきである。ただ、特別奨学生の自殺そのものは事実であることや、クラブ特待生の制度の改善指導方を求めることが組合の真意であったと理解できることに鑑みると、自殺の件の記載は、故意による事実の歪曲というものではなく、違法性の程度はさほど強いとはいえない。

〈14〉  大量の中途退職者について

当該記載は、教師の労働条件が劣悪なため大量の中途退職者が出ていることを指摘してその改善指導方を申し入れる趣旨の内容であると理解できるところ、(証拠略)を総合すると、学園では、常勤及び非常勤の講師を含めるとかなりの数の教師が希望退職していたことは事実であると認められる。なお、前記二1に認定のとおり、講師の雇用期間は常勤及び非常勤とも一年以内と勤務規定に定められているが、組合が常勤講師の雇用期間が限定されること自体を争っていたことは明らかであり、本件申入れ書においても常勤講師の「解雇」を問題としているのであるから、「中途退職者」につき講師を除外し専任教員のみを数えたという事情は、少なくとも常勤講師については、当該記載から全く窺うことができない。そして、講師の雇用期間が限定されるか否かの判断はともかくとして、組合が講師も含めて中途退職者を算出したこと自体は特に不当とはいえない。また、大量の中途退職が「労働条件が劣悪すぎ」ることに起因するかはこれまた一個の問題ではあるが、右は組合の見解を述べたものであって、格別不当とはいえない。そうすると、当該記載が、不当な内容を有するということはできない。

〈15〉  美術の授業での絵の具不使用について

当該記載は、債務者が新校舎の施設を大事にするあまり、美術の授業で絵の具を使わせず、美術の教員がそれに憤慨して退職したことを指摘し、教育より施設を優先する債務者への指導方を要請する趣旨の内容であると理解できるところ、(証拠略)を総合すると、美術室は新築された本館の五階にあること、美術の教員が昭和六三年三月に辞めたこと、その際同教員は一緒に寮舎監をしていた組合員の緒方浩に対し「校長から床を汚すといけないので絵の具を使わないようにという指示を受けた」という話をしたことがそれぞれ認められ、右各事実に照らすと、当該記載の指摘は伝聞に基づき、根拠としてはやや薄弱であるが、全く根拠のないものであるとはいえず、不当な内容であると断じることはできない。

〈16〉  専任教諭の少なさ・弊害について

当該記載は、「教諭」が少なく「講師」でまかなわれている学園の教員態勢の問題性を指摘してその改善指導方を申し入れる趣旨の内容であると理解できるところ、(証拠略)を総合すると、昭和六三年度における教員の構成については、数学科では全部で五名いるうち、二名が教諭(専任数員)、二名が常勤講師、一名が非常勤講師であり、また、国語科では全部で七名いるうち、二名が教諭(専任教員)、三名が常勤講師、二名が非常勤講師であったこと、入試問題の作成に常勤講師が関与しており、昭和六二年二月または昭和六三年二月の国語の入試問題は実際には常勤講師のみで作成した可能性があることがそれぞれ認められ、そうすると、右の指摘は相当な根拠に基づくものであるといえるのであり、当該記載が不当な内容を有するということはできない。

〈17〉  地下水の問題について

(証拠略)を総合すると、学園のある大峡町では、以前市営水道が引けておらず、債務者は、校舎の水道に地下水を利用していたこと、昭和六二年春から新校舎の一、二階に市営水道を引くようになったが、新校舎の三ないし五階及びその余の校舎では従前どおり地下水を利用していること、昭和四七年秋に井戸水の水質検査を行ったところ、「大腸菌群陽性・飲料不適」との結果が出たこと、大腸菌が学園の水道から検出されたのはそのとき一回限りであること、昭和五五年二月に調理科の生徒数名が腹痛を訴え一人の生徒が入院したのを契機に保健所が来校して検査をしたところ、調理室の水が残留塩素の量が少ないという理由で不適格と判断されたこと、その直後から調理室の水に自動滅菌装置が付けられ残留塩素の量は適性となったこと、なお、右生徒達の腹痛に関しては、水道の大腸菌が原因であるという検査結果はなく、水道水による食中毒についても保健所は否定の判断をしていること、冬場は渇水あるいは凍結のため地下水による水道は断水することがあり、組合から再三にわたりその改善要求がなされていたこと、昭和五八年ころには断水のため一部のトイレ使用ができないことがあったこと、また、組合は市営水道への切替えや水道施設の完備も要求していたことがそれぞれ認められる。

右各事実を踏まえて記載内容の真実性・正当性を考察するに、当該記載は、学園の校舎の水道の大部分に地下水が利用されていることの問題性を訴え、市営水道への切替えの必要を説くものであり、地下水利用の問題点として具体的に「夏は大腸菌、冬は断水でトイレに困る」ことをあげていると理解できるところ、右括弧内を普通に読むと毎年あるいはそうでなくても頻回にそのような弊害が発生していることを印象付けるものである。しかしながら、大腸菌が学園の水道から検出されたのは一回だけでそれも昭和四七年秋というかなり以前のことであることに照らすと、「夏は大腸菌」という記載は事実を歪曲または甚だしく誇張した不当なものであるといわざるを得ない。そして、事が病気衛生という重大な問題に関わるだけに、右記載が学園に対する不信を醸成し、その名誉を毀損するものであるという非難は免れない。他方、冬の断水については、そのためにトイレに困ることが頻回にあったという事情までは認め難いものの、断水が相当回あったことは窺えるのであり、やや誇張があるとしても、不当とまではいえない。

ところで、当該記載の全体の趣旨としては、地下水利用の問題性を訴えるものであるところ、学園の校舎の大部分の水道が地下水を利用していること、断水のほか衛生面での危惧から組合が度々その改善要求をしていたこと、断水については前述のとおり相当回数あったことが窺え、また、大腸菌の検出及び保健所の検査による不適格の判断がなされたことも各一回とはいえ事実としてあったことに照らすと、右訴え自体はあながち根拠のないものとはいえない。大腸菌についての記載が不当であることは確かであるとはいえ、右の点は、その不当性を軽減するものといえよう。

〈18〉  職員としての不正申告

当該記載は、職員でない者を長年職員として外部に公表していることを述べて、その指導を申し入れる趣旨の内容であると理解できるところ、(証拠略)によれば、調理科の非常勤講師として学校要覧等に十数年記載され続けている一名の医師が、実際には学園に勤務しておらず、授業または講義をしたことも無いに等しいことが認められるから、当該記載の内容が不当であるとはいえない。

3  右1に認定した本件行政指導申入れに前後する各事実及び右2に述べた行政指導申入れ書の各記載内容の真実性・正当性についての個別的検討を前提にして、本件行政指導申入れ等が懲戒事由に該当するか否か及び正当な組合活動といえるか否かを検討する。

(一)  本件行政指導申入れの事項は、(1)常勤講師制度及び常勤講師の雇用止めに関するもの(〈1〉ないし〈3〉、〈9〉)、(2)学園の教職員の態勢と労働条件に関するもの(〈4〉、〈10〉、〈11〉、〈14〉、〈16〉、〈18〉)、(3)学園の衛生・教育施設に関するもの(〈7〉、〈15〉、〈17〉)、(4)生徒の教育に関する問題(〈8〉、〈13〉)及び(5)理事長の家族による学園の経営・財産の私物化の問題(〈5〉、〈6〉、〈12〉)に分類することができ、大別すれば、(1)及び(2)が労働条件に関するもので、(3)以下が教育条件に関するものということができよう。

(二)  右の労働条件に関するものが組合活動の主要な部分を成すことはもちろんのことではあるが、教育条件に関するものも労働条件に関係するものとして、組合活動の内容に取り込まれることは充分理由のあることである。けだし、学園の経営のあり方や教職員が従事する教育業務のあり方は、教職員の労働条件に直接・間接の影響を必然的に与えるものだからである。この点からすると、組合が従来から債務者に対し労働条件のみならず教育条件に関するものも要求していたことを不当視することはできない。――もっとも、個々の教育条件の要求が、義務的団交事項になるか否かについては、その労働条件への影響の内容・程度を個別具体的に検討して決せられるべきことである。――そして、このような労働条件及び教育条件に関する問題は、本来は債務者と組合との間の交渉等を通じて解決すべき事項といえるが、交渉の難航等により適時の問題解決を期待することが困難な場合に、監督官庁に行政指導の申入れを行うことは、正当な組合活動の範囲内にあるといえる。そうすると、前記1(一)、(二)に認定の経緯や本件行政指導申入れの項目の前記性質に鑑みて、組合が宮崎県に対し行政指導申入れの行為に及んだことそれ自体は、格別非難するに当たらないと考えられる。また、そのことを生徒の父兄や関係団体に知らしめたこと自体も、同様に非難すべきこととはいえない。

(三)  問題は、申入れ書の記載内容の真実性または正当性の有無である。この要件を欠いた行政指導申入れ行為は、結局は監督官庁への讒訴であり、債務者に不当な不利益をもたらすものであって、もはや正当な組合活動の範囲内にあるとはいい難いのである。

前記2で個別に考察した結果を総覧すると、本件行政指導申入れの一八項目のうち、前述の(1)と(2)の労働条件に関するものとして大別し得る一〇項目については、すべて内容の正当性を肯定し得るが、(3)以下の教育条件に関するものとして大別し得る八項目については、正当性を肯定し得るもの(〈6〉、〈8〉、〈12〉、〈15〉)と肯定し得ないもの(〈5〉、〈7〉、〈13〉、〈17〉)とに分かれる。正当性を肯定できない四項目は、学園の衛生・教育施設に関するものが二項目、生徒の教育に関する問題が一項目、そして理事長の家族による学園の経営・財産の私物化の問題が一項目であり、いずれも、行政指導申入れ及びその後の父兄等への公表により、債務者の名誉・信用を毀損する結果をもたらしたということができる。就中〈5〉の学校法人の土地の譲渡及び〈17〉の学園の地下水利用(大腸菌の問題)の二項目は、内容の不当性が強く、実際にも、前者は宮崎県の学園に対する不信を惹起し(前記1(四)参照)、後者は学園の新入生徒募集に混乱を招いた(前記1(ハ)参照)と推認し得るのであって、債務者に少なからぬ不利益を与えたことは否めない。(もっとも、それ以上に、県から不利益な取扱いを受けたとか、生徒の入学人員の減少を来したとかいうことがなかったことは、右各同所に認定のとおりである。)

(四)  そうすると、本件行政指導申入れ等の行為は、内容の正当性を肯定できない右四項目を含んでいた点において、懲戒事由に該当し、かつ、組合活動としても違法であったというべきである。

もっとも、前記2で考察したように、内容の不当性の強い〈5〉及び〈17〉の各項目についてもなお債権者に有利に斟酌すべき事情が存するものであり、その余の〈7〉及び〈13〉の各項目については違法性の程度はさほど強くないことに留意する必要がある。

四  施設内における文書配付について

1  (証拠略)を総合すると、以下の各事実が認められる。

(一)  施設内での文書配付等を承認事項とする就業規則の定めは、現行勤務規定(昭和六二年四月七日施行)より以前の勤務規定にも存していた。ところが、組合と債務者との間で昭和五五年八月二三日に成立した和解協定書の中には、組合機関紙は従来どおり承認を経ずに配付することができるが、欠席の職員に対しては封筒に入れる等生徒の目に入らないよう配付する旨の項目が含まれていた。組合機関紙以外の組合関係文書の配付については、特に右協定書で決められたものはなかった。その後昭和六二年一一月二〇日に、組合が組合員の机上に学習会案内のチラシを配付したところ、翌二一日に、学園教頭が債権者に対し、右チラシ配付は無許可配付であり勤務規定違反になると注意した。

(二)  右谷浩は、昭和六一年四月から二年間常勤講師として学園に勤務した後、昭和六三年四月から熊本県の私立高校である熊本中央女子高校に常勤講師として勤務していたものであるが、濱口誠及び能丸淳一が当庁に提起した仮処分事件の申立人側疎明資料として、自己の学園常勤講師時代の見聞等を書き綴った陳述書を作成し、これが当庁に提出され、同事件の相手方であった債務者にも送付された。

右陳述書の中に、「熊本中央女子高校の甲斐副校長から転職の件で学園の右谷に電話があった際、受信した者が右谷に取り次がないばかりか右谷を非難中傷する内容の応答をしたことがあり、転職を妨害された」旨の記載があったため、学園校長兼理事の太田賢一郎が、昭和六三年五月二七日、甲斐副校長に右記載についての確認の電話をしたところ、同副校長は、失礼な応対はあったが非難中傷はなかったと答えた。その後、甲斐副校長は、右谷に対して、太田校長から確認の電話があったことを伝えた。

(三)  同月三一日、太田校長は、熊本中央女子高校の右谷に電話して、右谷が以前他の私立高校の教師採用試験を受けた際学園で自己が担任していた生徒の成績一覧表を受験資料として送付した件を尋ねて詰問し、右成績一覧表の返済を強く求め、それができなければ熊本中央女子高校に出向いて校長に会うとまで述べた。そして、その電話の中で、太田校長は右谷に対し、先に甲斐副校長に対して確認した右谷陳述書の前記記載に言及しそれが虚偽であると非難した。右谷は、その日の夜に債権者に電話して、太田校長からの電話の内容を伝え、熊本中央女子高校での身分が不安定になることへの危惧を訴えた。

(四)  債権者は、右谷からの電話があった直後に組合執行委員に連絡を取って抗議文作成を諮り、自らその夜の内に抗議文を作成して、翌六月一日朝執行委員会で右抗議文を理事会に提出するほか、抗議の実効性をあげるため教職員にも配付することを決めた。教職員に対する配付は、封筒に入れたうえで、勤務時間外になされた。右抗議文は、債務者理事会あての組合名の文書であり、「たびかさなる裁判への妨害活動と人の一生を左右する人権侵害をただちに停止されるよう怒りとともに訴えます」との標題のもとに、太田校長が右谷に電話をして、陳述書の虚偽記載に抗議し、さらに生徒の資料を外部に提出したことにつき「熊本に行って君の学校の校長、副校長に君のことをあらいざらいぶちまける」と述べたこと、右谷が陳述書を提出したが故に不当ないやがらせや報復を受け、そのために一生を棒に振るおそれがあること、一刻も早くそのような攻撃を停止するように指導して欲しいことを順に記載した内容のものであった。

(五)  右抗議文書が配付された当日である昭和六三年六月一日、学園事務長佐々木雅彦及び二名の学園教師が一緒に熊本に赴き、昼休みに右谷を熊本中央女子高校付近の喫茶店に呼び出して、陳述書の記載中には臨時免許状を有する教師につき「教員免許を持たない」と書き記す等虚偽の文言があることの確認を求めた。右谷は、これに対し、「臨時免許状は正式な免許ではない」等の応答をした。佐々木雅彦ら三名は、放課後も右谷と会見することを要望したが、その後右谷の学内からの電話で会見を断られたため、熊本中央女子高校に入り、甲斐副校長に面会して、同人に数日前太田校長が確認を求めた陳述書の記載の点につき再度の確認を求めた。

(六)  同日付で、組合は、「人の一生をふみにじらないで下さい・裁判を妨害をしないで下さい・再度訴えます」との標題のもとに佐々木雅彦ら三名の行動を伝える抗議文を作成し、翌六月二日、これを債務者理事会に提出するとともに、学園教職員に配付した。

2  右各事実に照らして、本件両文書の配付につき、懲戒事由に該当するか否か、また、正当な組合活動といえるか否かを検討する。

(一)  本件両文書は、その体裁・内容からして組合機関紙でないことは明らかであるから、昭和五五年和解協定書中の組合機関紙につき無承認配付を許容する旨の約定は適用されないというべきである。組合機関紙以外の組合関係文書の配付に債務者の承認を要するか否かは当事者間で争いのあるところではあるが、少なくとも本件両文書のような文書を教職員全般に配付することについては、昭和六三年五月ころには既に勤務規定三一条二項の適用対象となっていたというべきであり――すなわち、仮に債権者主張のとおり組合機関紙以外の組合関係文書の配付に承認を要しないとの労使慣行があったとしても、遅くとも昭和六二年一一月二一日の学園教頭の債権者に対する注意がなされたことにより、右慣行は廃止されたというべきである――、そうすると、本件両文書の配付は勤務規定の右条項に抵触するものといわなければならない。なお、成育途次にある生徒を教育する施設という学園の職場環境に鑑みると、勤務規定の右条項が憲法二一条または公序良俗違反に違反するという債権者の主張は採用できない。

(二)  しかしながら、本件両文書が作成・配付されるについては、学園関係者が右谷浩作成の陳述書に関し同人及びその勤務先の副校長に対し電話や面談により「虚偽」の記載の確認行為を重ねて行ったという事情があり、その確認の態様や「虚偽」とされる記載の内容に照らすと、訴訟の中途における相手方当事者側の証拠提出者に対する接触のしかたとしては甚だ適切さを欠いたものといわざるをえ得ない。右谷及び組合において、学園関係者の動きが陳述書提出を理由に右谷に対し不当な威迫を加え同人の熊本中央女子高校における身分の安定を侵しかねないものであると考えたことは、無理からぬものがあるというべきである。組合が、学園関係者の動きに対する抗議文を作成して、これを債務者理事会に提出するとともに、一般教職員にも配付して抗議を実効あらしめようとしたことは、その目的において正当なものであったといえる。そして、本件両文書の記載が全体として概ね事実を伝えそれに基づく主張を述べたものであるといえることや、配付方法及び配付時間につき配慮がなされていたということも併せて考慮すると、本件両文書の配付は、勤務規定に形式的には抵触しても、違法性がないものとして、実質的には該当性が否定されるべきである。

(なお、債務者は懲戒解雇の理由の中で、組合による従前の違法な文書配付をあげているが、これは、本件両文書配付の背景事情として述べたものに過ぎず、それ自体を独立の懲戒事由として主張する趣旨ではないと解されるので、本件両文書配付が懲戒事由に該当しないとの結論を得た以上、従前の文書配付の点についてさらに検討を加えることは不要と考える。)

五  懲戒事由該当性及び解雇権濫用について

1  前記二ないし四で本件解雇理由とされた組合活動につき各別に考察した結果を総合すると、本件解雇の理由としてあげられた(一)教室でのリボン闘争、(二)生徒への組合文書の配付、(三)学園の名誉を毀損する文書の配付、(四)施設内における文書配付のうち、(一)の点は勤務規定三〇条二号の遵守事項に、(三)の点は勤務規定三二条四号の禁止事項にそれぞれ違反し、かつ、いずれも違法な組合活動というべきであり、また、(二)の点は勤務規定三一条二項の承認事項には違反しないがやはり違法な組合活動というべきである。そして、右(一)ないし(三)の各点は、勤務規定四九条二号及び五号の懲戒事由にそれぞれ該当するということができる。しかしながら、(四)の点は、同規定三一条二項の承認事項に形式的には抵触するが、実質的には該当しないというべきであるから、懲戒の対象とすることは許されない。

ところで、債権者が組合の執行委員長として(一)ないし(四)の各組合活動で指導的地位を占め中心的役割を果たしたことは、従前の各認定事実及び弁論の全趣旨を総合してこれを認めることができる。そうすると、債権者については、(四)の点は懲戒の対象とすることができないものの、(一)ないし(三)の各点で懲戒事由が存するといわなければならない。

2  前記一2に述べたとおり、勤務規定には、職員が懲戒事由に該当する場合には懲戒処分として譴責、減給、出勤停止又は懲戒解雇の処分をすることができる旨定められていることが認められる。解雇は、継続的な労働契約関係を終了させ、労働者の生活基盤を失わせるという点で、労働者に重大な不利益を与えるものであるから、債権者に認められる前記懲戒事由について懲戒解雇という処分を選択したことが果たして相当であったか否かが、次に検討されなければならない。

まず、前記二で考察したように、(一)及び(二)のリボン闘争及び生徒への組合文書の配付は、一連のものとして同日になされたものであり、ともに違法な組合活動ではあるが、その各態様等からして違法性の程度はいずれも低いものであったというべきである。右に照らすと、両懲戒事由を併せても、およそ懲戒解雇をもって臨むようなものとは到底いうことができない。

問題は、(三)の行政指導申入れに関わる名誉毀損文書の配付の点である。前記三で考察したように、行政指導申入れの一八項目のうち四項目は不当な内容のものであり、これらについての行政指導申入れ及び父兄等への公表が、債務者の名誉・信用を毀損する違法な組合活動であったことからすると、懲戒解雇を選択肢として想定することは一応あり得ないことではない。しかしながら、前記三でさらに考察したように、不当性の強い右二項目についてもなお債権者に有利に斟酌すべき事情が存すること、その余の二項目については違法性の程度はさほど強いとはいえないことからすると、(三)の懲戒事由について懲戒解雇を選択することは甚だ重きに失するといわざるを得ない。そして、この結論は、(一)ないし(三)の懲戒事由を全部総合して考慮しても、なお変わらないというべきである。

なお、(証拠略)によれば、勤務規定では過去に懲戒処分があった者につき懲戒が加重される旨の定めが置かれていることが認められ、(証拠略)によると、債権者は昭和五〇年に組合文書の無許可配付等を理由に訓告の処分を受けたことがあると認められる。右処分が十年以上も前のしかも最も軽い不利益処分であったことに徴すると、右懲戒加重の規定は、前記結論を全く左右するに足りないことは明らかである。

そうすると、債務者が債権者に対しその違法な組合活動を理由に懲戒解雇という重大な不利益処分を行ったことは、違法とされる行為と処分との間の不均衡が著しいというべきであるから、解雇権の濫用に当たるということができる。

3  以上によれば、本件懲戒解雇は、債権者のその余の主張について判断するまでもなく、無効というべきである。

六  保全の必要性について

成立に争いのない(証拠略)によれば、債権者は、大学卒業後約一五年間学園の教師一筋の生活を送ってきたこと、債務者から毎月二一日に基本給二六万五五〇〇円に諸手当を加えた約二八万二九六〇円を賃金として支給され、これを唯一の収入源としていたこと、妻は看護婦として稼動し手取り月約一二万円余を得ているが、高校生と中学生の二人の子供を抱え、昭和六二年に購入したばかりの住宅のローン支払もあって、家族の経済生活は窮迫していることがそれぞれ認められる。右各事実に照らすと、債権者に対し学園での地位の保全と賃金の仮払いとを認める必要性が存するといえる。

七  結論

以上の次第で、本件仮処分申請は理由があるから保証を立てさせないでこれを認容し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 鏑木重明 裁判官 飯田喜信 裁判官 林正宏)

(別紙) 行政指導申入れ項目

〈1〉 常勤講師制度は教諭とまったくおなじ仕事をやり、外部にはすべて教諭と公表しておきながら、職員が来年けいやくしてくれるかどうかの不安で、生徒に目がむかず経営者にばかり目がむいて教育がおきざりにされてしまっています。職員に解雇の不安を蔓延させています。安心して教育に打込めるためには常勤講師制度は廃止すべきとかんがえますが、県当局はどうお考えでしょうか。(非常勤講師は除く)

〈2〉 再三団体交渉をかさねているにもかかわらず、今年になって一度も理事会が開かれないまま解雇がおきていますが、この解雇問題が大問題に広がったとき県当局には適法的な理事会の運営にたいする指導責任はないのですか。

〈3〉 監事の一人がもう一人の監事の名前すら知らない状態で今回の解雇がすすんでいますが、こんなずさんな運営にたいして県当局には指導責任はないのですか。

〈4〉 正式教員免許をもたない先生が一〇人も教壇にたっており、学級担任、クラブ顧問さらには重要な部長副部長の管理職をしめて、教育現場をとりしきっています。学校側は臨時免許でさしつかえないといい二〇年近くも続いています、しかもそれをすべて教諭として公表していますが、公費補助の公教育の場でゆるされることなのか、県当局はどうかんがえられますか。

〈5〉 半分公費の私学の学校法人の土地が、理事長の家族に譲渡されているみたいだが県当局は無関心でいていいのですか。

〈6〉 副理事長は毎日三時間近く、昼食に公用車で帰るのですが、ガソリン代、車代などばかになりません。そのような私的なことに公費がつかわれていいのだろうか。

〈7〉 保健室のベッドなどいくら要求しても二三年間も買いかえず、一方理事長室の前の日本庭園には一本数十万円の木がぼんぼん植えられているが、県費がこんなかたちで教育無視につかわれても行政に責任はないのですか。

〈8〉 退学者が大量に出て、休学者をあわせると八〇人を越し六・六%に達しますが、それでも県当局は教育に指導はできないと主張されるのですか。公費で半分まかなわれている公教育の場なのですが。

〈9〉 常勤講師は外部には教諭として公表してながら、県当局にはどう届けてあるのですか。簡単に解雇されるのですが、教育の場では継続性が大切なのですが、今回の解雇をだまって見過ごすのですか。新しく一三名も採用しているのに。

〈10〉 県が経常費補助しているのに、実際には基本給でも勤務評定で、同一年齢で一格二格と差をつけ、賞与でも大幅な差をつけ、その結果、年収は減収し、賞与だけで組合員の総損失額は一四五万円ですが、経常費補助している県当局に行政指導責任はないのですか、それともその様な事態をみとめられるのですか。

公立からは大幅に差がつき、同じ私立の日向学院、宮崎日大、緑ケ丘とくらべても年収で九〇万円~一二〇万円の差がある。

〈11〉 一切の組合の基本的活動が禁止され、不当労働行為がまかりとおり、組合潰しがおこなわれ、憲法がまったく通用しない現状ですが、公教育の場で、公費でなりたっている私学に県当局の行政責任はないのですか。

〈12〉 理事長の家族が経営する売店の売上げのためなのか?生徒は不必要に毎年全員スリッパを買替えさせられ、ジュースの自動販売機はどんなに抗議しても撤去しませんが、教育よりも利益優先に学校がなってることを、教育の問題だからといって指導できないのですか。

〈13〉 クラブ特別待遇生でクラブをやめたら入学以来の合計一〇〇万円を払えといわれ、払えずに出校停止処分となり、とうとう除籍された生徒が出て、さらにそのあと、それを苦にしてかどうかは分らないが自殺者まで出てますが、教育には口出し出来ませんというのなら、このような理不尽はいったい誰が指導してくれるのですか。県当局は公費助成したらあとは知らないというのですか。

〈14〉 労働条件が劣悪すぎて、一〇年間で八〇名の中途退職者をだしていますが、転勤のない私学でこのようなことはゆるされるのでしょうか。教育の蓄積と前進がありません県当局はどうお考えですか。

〈15〉 校舎を新築して教育よりも施設ばかり大事にするため、美術の授業で絵具が使えず頭にきて退職しましたが、県当局には教育に指導責任はないのですか。

〈16〉 一三〇〇人の学校に数学科、国語科は教諭がわずか、二人で、あとは講師ばかりで、入試問題も講師が作っていましたが、県に指導責任はないのですか。

〈17〉 いまだに校舎内の水道の大部分に地下水がくみあげられ、夏は大腸菌、冬は断水でトイレに困るのですが、一部にしか使われていない市の水道に全部変えるべきだと思うのですが県当局に行政指導責任はないのですか。

〈18〉 職員でないのに一七年近く、外部むけに職員になってる状態は必要悪として見過ごしてよいのでしょうか。

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